小学生の英検受験で失敗しないために
子どもの英検受験
英語検定試験(英検)は数十年前から日本における英語に関する資格として人気があります。昨今では、英検受験の低年齢化が進み、小学生や未就学児でも英検を受験することも少なくありません。
お子さんに英検を受験させたいと考える保護者の方や、お友達が皆、英検を受けているから自分も受けたいと考えるお子さんもますます増えています。
確かに、英検には多くのメリットがあります。合格を目指して英語学習のモチベーションが上がる、合格によって自信がつく、受験に有利になるなど、一見すると魅力的な要素が多々あります。
しかし、私は、英語教育に携わる者として、この英検ブームに大きな懸念を抱いています。
英検には見過ごすことのできない重大なデメリットも存在します。
今回は、一般的にはあまり広く知られていない、英検の隠れた問題点について、特に小学生の英語学習に焦点を当てて詳しく説明したいと思います。
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英検の3つのデメリット
今回は、一般的にはあまり広く知られていない、英検の隠れた問題点について、特に小学生の英語学習に焦点を当てて詳しく説明したいと思います。
①音声の軽視(発音できなくても合格してしまう級がある!)
驚くことに、英語初心者向けの英検の級、特に5級などでは、自分で英語の発音がほとんどできなくても合格できてしまうのです。
これは非常に危険です。なぜなら、英語学習の初期段階にある子どもたちに、「英語は発音を気にしなくてもいい」という誤った認識を植え付けかねないからです。
言語学習において、文字と音の仕組みを学び、正しい発音を習得することは、極めて重要です。
しかし、英検の級によっては、この重要な要素はほとんど評価されていません。
そのため、「どうやって読むのかわからないけれど、見たことがある単語を並べ替えて合格する」といった、信じられないようなかたちで合格してしまうお子さんもいるのです。
これは、そういう方法で合格しているお子さんが悪いわけではありません。
英検がそのような方法でも合格できるシステムになっていること、また、そんな合格でも周囲の大人が喜んでしまう風潮に問題があるのです。
英検の5級に合格しているというようなお子さんが私の教室に来てくださることもあります。
でも、レベルチェックを行うと、英検5級に受かったのなら当然知っているはずの言葉を全く違う発音で読んだり、簡単なフォニックスのルールを使った言葉なのに読めなかったり、そのようなケースも多々あります。
5級レベルの文章が読めずに5級に合格しているという状況は、本来はあってはならないことです。
英語のスタートがこういう感じで始まってしまったお子さんは、そのあとにフォニックスや文法を学んでも、苦労する場合が多いのです。
英検を受験する前に、もっと小学生の英語初心者に見合った英語学習環境にいれば、こんなことにはならなかったのに、と残念に感じることがあります。
➁問題集対策の罠(問題形式に慣れれば、英語力と関係なく合格してしまう!)
英検には、問題形式に慣れることで、発音以外にも実際の英語力とは無関係に合格できてしまうというデメリットもあります。
これは非常に深刻な問題です。なぜなら、合格した級の文法を本当に理解し、ライティングやスピーキングで適切に使用できるようになっていなくても、試験に合格できてしまうからです。
本来、言語学習の目的は、身につけたことを応用して、その言語を使えるようになるかということにあります。
しかし、英検対策に終始してしまうと、実践的な英語力が身につかないまま、ただ試験に合格するテクニックだけを習得してしまう危険性があります。
これでは、実際の英語使用場面で困難に直面することは避けられません。
発音の例と同じく、ほかの教室で英検5級を勧められて合格して私の教室に来てくださった生徒さんで、英語の基本的な文法をまったく理解していない生徒さんも多いです。
発音がわからないならまだしも、英検の教本などでも謡っている文法範囲のなかでも、初歩の初歩にあたる基礎的な内容も十分に理解していないのです。
多少は理解している生徒さんでも、自分でそれを使って英語を新しく作り出すことが難しいというお子さんは多いです。
それでも「合格」してしまっているので、「この程度ができればいいんだな」という感覚をお子さん本人にも保護者の方にも植え付けかねません。
次にお伝えする3つ目のデメリットと相まって、この「合格」のシステムこそが、日本人英語を使えない理由かもしれません。
③無理な級挑戦の悪循環(実力がなくても次々の上の急に挑戦したくなる!)
大人も同じだと思いますが、小学生が英検の一つの級に合格すると、多くの場合、すぐに次の級にチャレンジしたくなります。これは一見、向上心の表れのようにも見えますが、実は大きな落とし穴があります。
前の級で学んだ文法や語彙が十分に定着しないまま次の級に挑戦することで、英語の基礎がどんどん薄くなっていってしまうのです。
英語の文法は、ピラミッドのように下の段から着実に積み上げていくべきものです。
基礎がしっかりしていないまま上の層を積もうとすると、全体が不安定になり、やがて崩れてしまいます。
急いで上の級を目指すよりも、一つ一つの段階をしっかりと理解し、使いこなせるようになることが重要なのです。
この点は、いくら強調しても強調しすぎることはないくらい、非常に重要なポイントです。
ゼロからピラミッドをつくっていて、基礎工事や下のほうの段が不完全なまま上の段を積もうとしたら、必ず失敗してしまいます。
そして、そのピラミッドを建て直したいと思ったら、上の段を修復するのではなく、下の段まで戻って修復することが必要なのです。
英検5級や4級の文法をおろそかにしたまま、合格最低点ぎりぎりで合格を続けていったら、3級や準2級に入るころには、5級や4級の文法がわかっていないことの延長で、文法の理解が不可能になります。語彙にしても同じでしょう。
そうなったらお子さんは、既に「合格」している5級や4級の文法を、場合によっては基礎の基礎まで戻って学びなおさなければならないのです。
プライドも傷つきますし、非常に効率の悪い学び方です。
でも、実際にこういうお子さんが多いのが現実です。
または、文法をおろそかにしながらどんどん最低点で合格を積み重ねていった結果、級を取得はしているけれど、本来その級で学んでいるべき内容を使うことはできないという、英検取得の意味がないような事態に陥ることになります。
英検の本来あるべき姿
英検は本来、自分の英語力を確認するためのツールであるべきです。
つまり、日々の学習や実践を通じて英語力を磨き、その結果として自分がどの程度のレベルに達しているかを確認する手段として活用するのが理想的です。
特に3級くらいまでは英語の基礎の基礎を問う内容です。
もし100点満点で合格できなかった場合、それは自分の弱点を示すシグナルとして捉え、徹底的に復習する機会として活用するべきでしょう。
ぎりぎりの点数で合格することに意味はありません。むしろ、完璧に近い点数を目指すことで、確実な英語力の向上につながるのです。
時代遅れの英検対策
「英検のための英語学習」は、現代のグローバル社会においては明らかに時代遅れと言わざるを得ません。
英検の下位の級で問われているのは、実際の英語力ではなく、試験問題を解くスキルなのです。英語力がなくても、そのスキルを身につければ英検はある程度合格してしまいます。
実際に、そういうスキルを教える英語塾などが多く存在します。これは、塾の生徒で英検に合格する人がいれば、〇〇人合格しました!などと発表して、塾のアピールに利用することができるからです。
でも、英語を学ぶ本当の目的は、身につけた英語を活用して、世界の人々と交流し、異文化を理解し、自分の考えを表現すること。そして、その学習の過程で、自己成長を遂げることです。
英検の合格だけを目指した学習では、この本質的な目的を見失ってしまう危険性があります。
こんな状況でも英検取得に人気があるのは、英検取得は、本来の英語学習よりも簡単で、時間もかからないからです。
最短距離でスキルを練習して、「日本で一番利用されている英語資格」を取得することができるのですから、皆が夢中になるのも無理はありません。
でも、お子さんの将来のことを真剣に考える保護者の方は、この点について疑問を投げかけ、本当にこれで良いのか熟考する必要があります。
バランスの良い英語学習を
英検には確かにメリットがありますが、これまでお伝えしてきた、見逃すことのできないデメリットも存在します。
保護者の皆さまには、お子さんの英語学習において、英検に過度に依存しないようご注意いただきたいと思います。
一言でいうと、英検合格のための英語学習は、とてもバランスが悪いです。
読めないけれど単語として言葉を認識し、使えないけれど知っている文法の通りに単語をあてはめ、リスニング問題を練習すると合格してしまいます。
このようなかたちで合格しても、英語を身につけるという目標に近づかないどころか、むしろ遠ざかってしまいます。
そういう無理な英検合格の代わりに、小学生のお子さんには、以下のようなバランスの取れた学習アプローチをご提案します。
①フォニックスを通じて文字と音の仕組みを理解し、正しい発音の習得に重点を置く
➁小学生でもわかりやすい内容の文法を学んで、文の仕組みをしっかり理解する
③定着が悪いところは何度でも復習し、基礎をしっかりと固めてから次のステップに進むようにする
④英検は、学習の成果を確認する手段の一つとして位置づける
英語学習は長い道のりです。英検に限らず、短期的な成果に一喜一憂するのではなく、長期的な視点で子どもたちの英語力を育てていくことが大切です。
英検は確かに一つの指標になりますが、それだけに頼らない、バランスのとれた学習環境を整えることが、真の英語力向上につながるのです。
子どもたちが豊かな英語学習を通じて有意義な経験を積めるよう、周囲の大人が適切な導きをしていく責任があります。英検に振り回されることなく、子どもたちひとりひとりの可能性を大切にした英語教育を心がけたいものです。
ご自宅での英語学習に加え、英語教室などもご検討の方は、教室の英検に対する方針などもぜひご確認ください。
本当に生徒のことを考えている教室は、子どもたちや保護者にむやみに英検受験を勧めることはありません。
英検のメリットとデメリットをしっかり理解して、お子さんの英語教育に英検をうまく活用していきましょう。
中目黒スマイル英語教室の英検指導について
ちなみに、中目黒スマイル英語教室の英検指導は下記の方針のもとに行っています。
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