小学生英語、「点の学習」は卒業したい!
小学生英語の現状と課題
私の教室には、ほかの英語スクールで英語を学んできて、うまくいかなかった生徒さんが保護者の方に連れられて来てくださることがあります。
お子さんや保護者のお悩みはさまざまです。
- 「英単語は覚えるけど、実際に使えない」
- 「文法規則は暗記したのに、会話になると途端に混乱する」
- 「テストの点数は良いのに、実践的な英語力が身につかない」
- 「英検には合格したけれど、英語を使えない」
これらの悩みは、実は多くの保護者の方やお子さんが抱えている共通の問題です。
長い間、英語を学んでいるはずなのに、実際に英語を使えないケースが多いです。
読めない・書けない・話せない・聞き取れない、という、「4重苦」の状態になっているお子さんもいます。
なぜこのような状況が起こるのでしょうか?
「点」の学習の問題点
英語を学んでいる多くの小学生のお子さんが陥っているのが、英語の学習のなかでいろいろな知識はあるけれど、それらが「点」になって互いにつながっていない状態です。
ここで言う「点」とは、次のようなイメージです。
例えば、
- 「morning」という単語を見て、「朝」と意味だと分かる。
- 「morning」という単語を見て、文字の並びで覚えているので「モーニング」と言える。
- 「be動詞の使い方」というルールを暗記している
- テストで出題された文型を機械的に組み立てられる
これらは確かに英語学習の一部ですが、実はこれだけでは真の英語力とは言えません。
なぜなら、これらの「点」は互いに孤立していて、実際のコミュニケーションには結びつきにくいからです。
このまま「点」の学習を続けると…
「点」の学習だけを続けていると、次のような問題が生じてきます。
- 実用的な英語力の欠如: 単語や文法を知っていても、実際に使えない
- モチベーションの低下: 学んだことが役立たないため、学習意欲が失われる
- 英語アレルギーの発症: 英語を「難しい」「使えない」ものと認識してしまう
- 時間とお金の無駄: 効果的でない学習方法に貴重なリソースを費やしてしまう
特に深刻なのは、この「点」の学習が長年続くと、それを修正するのが非常に困難になることです。
中学生や高校生になってから気づいても、すでに手遅れという場合も少なくありません。
でも、簡単には解決できない…
「じゃあ、どうすればいいの?」と思われる方も多いでしょう。
確かに、「点」の学習から脱却するのは簡単ではありません。
現実的には、次のような障壁が考えられるでしょう。
- 効果的な学習方法が分からない
- 既存の教材やカリキュラムが「点」の学習を前提としている
- 「点」以外の学習方法を知らない教師や塾、保護者が多い
- 短期的な成果(テストの点数など)を求められる
これらを乗り越えて、効果的な英語学習法を見つけ出すのは、個人で取り組むには大変な労力が必要です。
「点」から「線」へ、「線」から「面」へ、そして「立体」へ
ここで、私が提案する英語学習の新しいアプローチをご紹介します。
それは、「点」から始まり、「線」「面」「立体」へと進化させていく方法です。
英語のすべての学習要素において、「点」の学習を「線」「面」「立体」へと進化させていくことができますが、ここでは、私の教室で重視している「フォニックス」と「文法」に焦点を当ててお伝えしたいと思います。
例として、「morning」という単語を知っていて、「be動詞の使い方」のルールも分かるという状態を取り上げます。
英検5級程度に合格しているお子さんを想定しました。
フォニックスの学び:「点」から「線」へ
まず、フォニックスの学びを通じて、単語の理解を「点」から「線」に変えていきます。
点の状態:
- 「morning」という単語を見て、「朝」と意味だと分かる。
- 「morning」という単語を見て、文字の並びで覚えているので「モーニング」と言える。
線の状態:
- 「morning」というスペルのなかの個々の文字と音の関係を理解している
- 「morning」というスペルのなかでフォニックスルールを発見し、正確に発音できる
フォニックスを学ぶことで、単語は単なる記号ではなく、音と意味が結びついた生きた言葉になります。
文法の深い理解:「点」から「線」へ
文法も同様に、単なる暗記から深い理解へと進化させます。
点の状態:
- 「be動詞の使い方」というルールを暗記している
線の状態:
- be動詞が「状態」を表すことを理解している
- be動詞の前後にはどういう品詞があるか、そしてそれぞれの品詞の意味も理解している
- be動詞と一般動詞の違いを説明できる
このように、文法規則の背景にある「なぜ」を理解することで、より柔軟に文法を使いこなせるようになります。
実践的な応用:「線」から「面」へ
こうして「点」から「線」につなげて獲得した知識を応用して、実際に英語を使う場面で使用できるようにします。
これが「線」から「面」への進化です。
フォニックスの発展:「線」から「面」へ
- 新しい単語に出会っても、フォニックスルールを使って読み方を推測できる
- 聞いた音から正しくスペリングを推測できる
文法の深い理解:「線」から「面」へ
- be動詞を使って主語をさまざまに変えて状況を自然に表現できる
- be動詞を使った肯定文、否定文、疑問文はスピーキング、ライティングともに間違えることがない
- be動詞と一般動詞を混同せず、正しく使える
この段階では、学んだ知識を実際のコミュニケーションで自在に使いこなせるようになります。
総合的な英語力:「面」から「立体」へ
こうして「点」から「線」、「面」へと、それぞれの学習要素を発展させてきたお子さんはさらに、フォニックス、文法、語彙、リスニング、スピーキングなど、英語の様々な要素を複合的に組み合わせて使えるようになります。
これが「面」から「立体」への進化です。
フォニックスルールを駆使して新しい単語を吸収し、読み書きはもちろん、スピーキングやリスニングでもそれをフル活用できます。それを、正しい文法と両立させながら英語を高いレベルで完成させることができるのです。
これを繰り返していくことで、英語が単なる「科目」ではなく、自己表現や情報収集の強力なツールとなります。
イメージは星座
もしかして、これを読んでいらっしゃる保護者の方自身が、これまでに「点」の英語学習しか経験したことがないかもしれません。
その場合には、「線」や「面」、そして「立体」の学習をイメージすることも難しいかもしれません。
そういう方は、「星座」を想像していただくとよいかもしれません。
夜空にたくさん見える星を、「あ、星があるな」と見ているのが「点」の状態。
点のように見える星をつなげて線を想像し、そこから「星座」を見つけることができるのが「面」の状態。
たくさんの星座の背景を知り、星座にまつわるストーリーを興味深く味わえるのが「立体」の状態です。
小学生のうちから「立体」に進化させたい
この「点」から「立体」への進化は、小学生のうちから始めることが非常に重要です。
その理由は以下の通りです。
- 柔軟な脳の活用: 子どもの脳は言語習得に適した状態にあり、自然に英語を吸収できる
- 良好な発音の獲得: 早期からフォニックスを学ぶことで、ネイティブに近い発音が身につく
- 長期的な学習時間の確保: 早く始めることで、より多くの学習時間を確保できる
- 英語への肯定的態度の形成: 楽しみながら学ぶことで、英語に対する前向きな姿勢が育つ
- グローバル社会への準備: 早期から英語力を育てることで、将来のグローバル社会に備えられる
中学生や高校生になってから始めようとすると、すでに「点」の学習に慣れてしまっていたり、英語に対する苦手意識が形成されていたりして、「立体」への進化が難しくなってしまうお子さんもいます。
複数の「面」づくりを同時進行させて「立体化」を速める
私の教室では、たとえばフォニックスと文法に関しては、完ぺきではないにしても「面」づくりを同時進行させて早期に「立体化」を進めています。
つまり、フォニックスをまず点→線→面とつくっておいて、そのあとで文法を点→線→面とつくって、最後に立体を組むのではなく、
フォニックスの面づくりと文法の面づくりを同時に進め、小さな面でも小さな立体をつくっていくことを繰り返して大きな立体を完成させていくのです。
フォニックスの学習はフォニックスの時間だけ、文法の学習は文法の時間だけ、と区切ることはしません。
英語レッスンのあらゆる場面でフォニックスも文法も意識し強化できるように工夫することで、さまざまな立体をつくっています。
これが、小学生の英語指導に非常に効果的だと感じています。
「立体化」がうまくいく条件
小学生の英語学習で学習要素の「立体化」を進めるのは、簡単なことではありません。
指導する側が、しっかりとした目的意識をもって、立体化を進められるような授業設計を行うことが最低条件です。
でも、子どもたちは、工夫された「立体化」のレッスンをとても楽しそうに受けてくれます。
「点」だけの学びは、どうしても退屈なルーティンの学習になりがちです。
それを線にも面にもできるという意識を子どもたち自身に持ってもらい、さらにそれらを複合的に「立体化」して言語が成り立っていることを、小学生のうちに体験できたら。
お子さんにとって、生涯にわたる大きなプレゼントになると思いませんか?
「点」の学習は卒業したい
ぜひ、たくさんの英語教室を見学して、そこでどのような指導が行われているか、観察してみてください。
異なる指導法を見ていると、「これが線の学習なんだな」とわかってくるのではないかと思います。
ぜひ、お子さんには「線」や「面」、できれば「立体」の学習ができる環境を準備してくださいね。
将来に向けたしっかりした英語の基礎づくりにつながります。
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