【英検5級】が実は一番難しい!小学生が英検を急ぐべきではない理由
英検5級は「基礎だから簡単」ではない
最近、小学生が英検取得を急ぐ傾向がますます強まっています。「5級は一番簡単な級だから」と安易に受験させるケースや、理解が追いついていないまま上の級を目指すケースが増えているようです。
英語指導の現場にいる講師として、このことを大変心配しています。
「5級って簡単じゃないの?」
ご自身が中高生で英検受験されていた頃、英検の一番下の級は3級だった、という保護者の方も多いのではないでしょうか。
私もそういう世代です。
でも、いつの間にか、3級の下に「4級」「5級」という級が新しくつくられました。
そのせいか、5級は「とても簡単」というようにとらえる保護者の方も増えてきているようです。そして、お子さんたちも、そういう保護者のお考えを真似して、「5級は簡単」と考えて気軽に受験するケースが増えているようです。
お気持ちはよくわかります。
確かに、5級内容は、少なくとも義務教育以降、しっかり英語を学んできた大人にとっては簡単でしょう。
でも、初めて外国語に触れる小学生が学ぶ内容としては、決して簡単ではないのです。
そして、この「5級は簡単」という認識こそが、英語学習の大きな問題になっています。
簡単だと思って気軽に受験してしまい、深い理解がなくても合格し、次々に上の級を目指してしまいがちになるからです。
5級が簡単ではない理由
英検5級は、簡単な級ではありません。
その理由としては、次のようなものがあげられます。
- 5級には、英語学習の土台となる重要文法がすべて含まれている
- 初めて学ぶ文法概念が非常に多い
- 日本語にない文法体系を理解する必要がある
- 応用のベースとなる考え方を習得しなければならない
上記はほんの一例ですが、私の教室では、これらを、英語を初めて学ぶお子さんにとって非常に大切なステップと考えています。
そして、こうした内容にまじめに取り組んで、生徒さんの英語の理解を仕上げたうえで5級受験を推奨しています。
その場合、「じゃあ、英検5級を受験してくださいね」とは簡単には言えないくらい、5級の範囲を習得するのには時間もエネルギーも要するものなのです。
英検5級は「一番基礎的な級」であると同時に、「一番難しい級」と言えるでしょう。
なぜ5級が「一番難しい級」なのか
私自身の英語学習経験、そして長年の英語指導経験から、5級の学習者が直面する典型的な課題を改めてお伝えします。
文法体系との初めての出会い
小学生の子どもたちは、初めて「英語」という外国語を学び、ことばの「文法」を学びます。
日本語とも共通する場合には日本語のケースも理解しながら下記のような内容に触れ、理解し、英語独特の文法を理解し定着させるだけでも、大変な努力が必要とされます。
- 品詞の区別
- be動詞と一般動詞という新しい概念とその区別
- 代名詞という概念と、代名詞によって文が変わることの理解と定着
- 語順の基本的な理解
- 肯定文、否定文、疑問文の理解とそのつくり方
小学生にはこんなことが難しい
小学生の子どもたちにとっては、たとえばこんなことがとても難しいのです。
- 三人称単数の場合に一般動詞につく「s」をなかなか覚えられない
- 代名詞の使用に慣れたあと、代名詞ではなく固有名詞で文をつくるときに戸惑う
- 否定文、疑問文のつくりかたになかなか慣れない
- be動詞と一般動詞を混同する
基礎的な内容ですが、繰り返しの学習と練習が必要です。
理解と定着に時間がかかるのです。
浅い合格は簡単、深い合格は困難
もちろん、ここまで深い内容の理解や定着は目指さず、「5級の問題が解ければよい(当て勘なども含めて!)」という考えての「浅い合格」は難しいことではありません。
でも、私の教室で目指しているような「深い合格」には、多大な労力が必要とされるはずです。
中目黒スマイル英語教室の英検に対する考え方
以前もこちらの記事でご紹介していますが、中目黒スマイル英語教室では、英検を「英語の定着を確認する機会」ととらえて、無理なペースでの受験は特別な場合を除きおすすめしていません。
特別な事情がない小学生のお子さんには、「英検に受かるために英語を学習する」ではなく、「英語学習をしていたら英検に合格した」という状況が理想的と考えています。
英語学習については、下記のようなアプローチを大切にしています。
英語学習に不可欠な内容なので、英検受験にも役立ちますが、「英検受験への最短の道」ではありません。
基礎を「本質から」理解する
- 単なる暗記ではなく、なぜそうなるのかの理解
- 実際のコミュニケーションでの使用場面の提示
- 段階的な学習プロセスの確立
実践的な学習方法
- 文法項目ごとの丁寧な説明
- 実際の会話での使用練習
- フォニックスの学習を経た音読による定着
- 作文による応用力の養成
長期的な視点での指導
- 焦らず、確実に理解を深める
- 実力に見合った進度調整
- 定期的な理解度チェック
5級受験をなぜ急ぐべきではないのか
先ほどもご紹介したこちらの記事でも詳しく書いていますが、以下の理由から、英検5級の学習は焦らず、時間をかけることをおすすめします。
理解の深さが重要
- 5級範囲は英語学習の基礎となる部分です。表面的な理解では応用力がつきません。
- 5級範囲を丁寧に学び定着させないと、結局はそこに戻って復習する必要が生じます。将来の学習効率にも大きな影響が出ます。
定着には時間が必要
- 新しい概念が多く出てきますが、理解には個人差があります。
- 理解しただけでは十分ではなく、自分の力で使えるようになるまでにはさらに練習が必要です。
本質的な英語力の育成
- 試験対策だけでなく、実践力を重視した英語学習が理想的です。実践力をつける学習は一朝一夕には実現しません。
- 5級では発音理解や文字を正しく読む能力は問われませんが、英語の基礎である「フォニックス」や「発音」を学びながらの英語学習が理想的です。それにも時間がかかります。
5級を受験する前に、学ぶこと、理解すること、練習すること、定着させること。
山のようにあります。
それをすっ飛ばして受験して合格しても、長期的には意味がありません。
お子さんの将来の英語力を考えた場合、英検5級に関しては、じっくり学んで理解してから受験する「急がば回れ」のアプローチが最適なのです。
5級は「基礎」ではなく「土台」
英検5級は、単なる「基礎」ではなく、英語学習の「土台」となる重要な級です。
将来も役立つ英語を身につける英語学習は、強固なピラミッドを構築するようなものです。
基礎が弱いピラミッドは、上にいくら石を積んでいっても安定せず、いずれ崩壊していってしまいます。
英検5級は、ピラミッドのまさに一番下の基礎の部分と言えます。
だからこそ、時間をかけて丁寧に範囲を学び、完全に理解し使えるようになってから受験する。
受験するなら、5級レベルは満点をとってほしい。
万一間違えたところがあれば弱点として徹底的に見直してから次の級の受験が望ましい。
これが私の教室の考え方です。
5級の範囲である英語学習の土台をしっかりと築くことで、将来の英語学習がより楽に、効果的になります。
焦って上の級を目指すのではなく、5級の内容を確実に理解し、使いこなせるようになることが、真の英語力向上への近道となるのです。
英検受験する生徒さんへのサポート
以上、私の教室の英検に対する考えも併せてお伝えしました。
生徒さんや保護者の皆さまにもお伝えしていますが、それでも、「それはわかるのですが…先生の言うようなレベルには達していないけれど、やはり5級を取得したい!」というお考えの方もいらっしゃいます。
もちろん、ご家庭の意思は尊重させていただきますので、そういう場合には全力で応援しますし、受験することが決まったお子さんに対しては、教室として最大限サポートさせていただいています!
英検受験を目指しているお子さんたちが少しでも、「将来につながる」英語力をつけたうえで英検5級を取得できるように、現在、新しい教材開発も行っているところです。
英検受験を目指すすべてのお子さんたちが、「〇〇級取得!」という表面的な結果だけではなく、その先につながる英語学習を経たうえで合格を手にすることができるように願っています。
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