英語のことを「単語や文法を覚える暗記科目」だと思っている人もいるかもしれません。
でも、中目黒スマイル英語教室で大切にしているのは、むしろその逆です。
「どうしてこうなるんだろう?」
「こっちは簡単なのに、どうしてこっちは難しいんだろう?」
「この2つ、何が違うんだろう?」
そんなふうに、ことばを観察したり、比べたり、考えたりする時間を大切にしています。
ただ一方で、英語には、考え続けるよりも、覚えてしまったほうがいいこともあります。
そういうものについて、私は「九九方式」でいいのではないかと思っています。
日本と世界の「九九」
日本では、小学校に入ると、多くの子どもが九九を覚えます。
「にいちがに」
「ににんがし」
「にさんがろく」
と、声に出して繰り返しながら覚えていきます。
こうした九九は日本だけのものなのでしょうか。
実は、そうではありません。
世界の多くの国でも、掛け算表、いわゆる multiplication table を覚える学習は行われています。
たとえばイングランドでは、子どもたちが12×12までの掛け算を素早く答えられることが求められています。
また、中国には非常に古くから九九を唱えて覚える文化があり、日本の九九もその影響を受けて発達してきたと考えられています。中国や朝鮮半島、日本など東アジアには、掛け算を音として唱えて覚える長い伝統があります。
インドでは、「20の段まで覚える」とよく言われます(実際に20の段まで扱う教材や学校は多くありますが、インドのすべての子どもが20×20まで完全に暗記している、というわけではないようです)。
つまり、
掛け算の基本を、考えなくてもすぐに取り出せるところまで身につける
という考え方そのものは、日本だけのものではありません。
でも、日本の九九という仕組みは、なかなかよくできています。
「ににんがし」は、ただの読み上げではない
たとえば、
2×2=4
を普通に読めば、
「二かける二は四」
です。
でも九九では、
「ににんがし」
と言います。
短い。
しかも、リズムがあります。
「さんしじゅうに」
「さぶろくじゅうはち」
「しちはごじゅうろく」
など、通常の数の読み方とは少し違う表現まで使いながら、短い音のまとまりとして覚えられるようになっています。
日本語の九九は、研究でも、一定のリズムを持った記憶のための定型表現として扱われています。
ただ数字と数字の組み合わせを目で覚えるのではなく、音として丸ごと記憶する。
日本語という言語の特徴をうまく使った学習法だと思います。
「7×8は?」で計算しない
そして九九を一度身につけてしまうと、
「7×8は?」
と聞かれて、
「7+7+7+7……」
と計算する人はほとんどいません。
「56」
と出てきます。
つまり、毎回その場で計算しているというより、すでに長期記憶に入っている答えを取り出しているわけです。
これは学習において、とても重要なことです。
基本的なことを毎回一から考えなくてもよくなれば、その分、もっと複雑なことを考えるために頭を使えるからです。
算数でも、九九がすぐに出てくるからこそ、その先の筆算や割り算、文章題などに頭を使えるようになるのだと思います。
だからといって「丸暗記だけでいい」わけではない
ここで大切なのは、
「考えずに丸暗記する」ことが大事なわけではない
ということです。
掛け算を学ぶときには、
「3が4つあるって、どういうこと?」
「3×4と4×3は何が違う?」
「どうして答えは同じになるの?」
といったことを考える時間も必要です。
実際、日本の算数教育でも、掛け算の意味や仕組みを理解したうえで、九九を身につけていくことが重視されています。
十分に考えて、仕組みを理解する。
そのうえで、もう毎回考える必要のないものについては、考えなくてもできるところまで身につける。
私は、ここが九九から学べる大切なところだと思っています。
英語にも「九九にしてしまったほうがいいこと」がある
九九の話が長くなりましたが、英語の学習でも、同じことが言えると思います。
たとえば、文法です。
文法について、
「どうしてここはこうなるんだろう?」
「なぜ did のあとの動詞は原形になるんだろう?」
「日本語と英語では何が違うんだろう?」
と考えることは大切です。
教室でも、そういうことはたっぷり話します。
「こっちは簡単なのに、どうしてこっちは難しいんだろう?」
「さっきの文と、この文は何が違う?」
と比べたり、予想したりする。
そういうプロセスそのものが、ことばを学ぶ面白さだと思っています。
これについては、例をこちらの記事で紹介していますのでご覧ください。
でも、仕組みがわかったあとまで、英語を使うたびに毎回、
「さっきとは違って、こういうルールだから……」
「過去だからdoがdidになって……」
と考える必要はありません。
基本的なものについては、九九のようにして覚えてしまえばいいのです。
考えなくても口から出てくるところまで
私の教室では、英語の文法を「文法九九」として唱えて覚えることを推奨しています。
考えなくても、自動的にできるように。
日本語の九九に独特の音声リズムがあるように、英文法の九九も、英語のリズムで覚えます。
英文法を覚えながら、英語らしいリズムにも繰り返し触れられる、一石二鳥の方法だと考えています。
第二言語の学習では、最初は意識しながら使っていた知識を、練習によってより速く、より少ない意識で使えるようにしていく「自動化」は重要だと考えられています。
私が自分の英語学習経験を振り返っても、こうしたスキルの「自動化」が、より複雑な言語理解や習得の鍵だったと思います。
「ルールを知っている」だけで終わらせず、九九のように暗記する。
それを、思い出しながら使う。
違う文でも使う。
忘れてしまったら、また思い出して使ってみる。
そうやって、考えなくても使えるところまで身につけていく。
英語の基礎については、これがとても大切だと思っています。
考えるところでは、とことん考える
一見すると、
「考える学習」と
「覚える学習」は、
正反対に見えるかもしれません。
でも、私はそうは思いません。
考えるところでは、とことん考える。
そして、
もう毎回考えなくてもいいものは、考えなくてもできるところまで身につける。
この二つを、両立させればよいのです。
実際に私の教室では、この「文法九九」を取り入れてから、子どもたちは、英語の文法を覚えるのが楽になり、より簡単に使えるようになりました。
「文法九九」には、それぞれの子どもたちが自分のペースで取り組めるというメリットもあります。
覚えるのは、その先でもっと考えるため
九九がすっと出てくるから、その先の難しい算数を考えることができます。
英語も同じです。
基本的な文法や表現が自動的に出てくるようになれば、
「何を伝えよう?」
「もっとわかりやすく言うにはどうしたらいい?」
「この表現とあの表現では、ニュアンスがどう違う?」
といった、もっと面白いことに頭を使えるようになります。
だから、私は「覚えること」そのものを否定する必要はないと思っています。
大切なのは、何でもかんでも暗記することではありません。
考えるべきことは、たっぷり考える。
そして、
覚えなければならないことは、九九のように、考えなくても使えるところまで身につける。
覚えることが、学びのゴールではありません。
その先で、もっと自由に考えるために覚える。
「考える」と「覚える」を両立させる学びを通じて、子どもたちが英語の世界を楽しめるように、今日も教材やレッスンづくりに奮闘しています。



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